花に美少年
少し前までは、昨晩降り積もった雪で遊ぶ子供たちがいたはずなのに、もう誰もいない。
小さな公園に私だけがいる。

あの男が帰った後、ベンチに座ってただぼーっとしていた。
時々思い出したかのように涙が溢れ出たけれど、少しすると妙に冷静になった。
だけどしばらくするとまた、涙が出てきた。
あの男の前では流せなかったのに、今になって零れだす。
最悪過ぎて、開き直った部分もある。
あんな男と別れて正解だと思う。
でも好きって感情だけは、なかなか上手く整理できない。
だからただ何も考えずに、一人でベンチに座っていた。

「おねーさん」

誰もいない公園に、昨日と同じ声がする。
また、天使が笑いに来たの?

「お姉さん」

その声に、顔を上げることなく地面を見つめた。
薄暗い視界に、白いスニーカーが入り込む。

「お姉さん、行くとこ見つかった?」

「・・・」

「そろそろ帰らないと、風邪ひくよ?」

「・・・ない、から」

「ん?」

「帰る場所なんてないから!」
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