花に美少年
「そっか」
「うん。じゃあ、行くね」
心配そうに私を見る男に、二日間の感謝を込めて、精一杯の笑みを見せた。
「いってらっしゃい」
部屋を出る直前に掛けられた声に、昨日よりも心が軽くなった気がした。
もう帰らないって言ったのに。
厄介ついでの厄介な出会い。
結局ナンパだったのかもわからないけれど、ナンパだったのなら今頃ガッカリしているだろう。
その姿を想像したら、何だか笑えた。
「いってらっしゃい」なんて言われたの、いつぶりだろう。
軽くなった心が、私を少しだけ前に進ませた。