花に美少年

最悪だ。この男には気遣いってものがないらしい。
案の定、友達から電話がかかってきた。
何を聞かれるかわかっていたから無視をすると、今度はメールが届いた。

【大丈夫?話聞くよ?】

心配してくれているのだろうけれど、話す気にはなれなかった。
真奈美には話せても、他の友達には話せない事もある。
別にその子を信用していないとか、好きじゃないとかではなくて、なんとなく友達と一言で言っても、そこに流れる空気みたいなのは一人一人違って、それぞれにここまでっていう範囲みたいなものがある。
一週間後なら話せるかもしれないけれど、今は話せない。
この話は出来るけれど、この話はなんとなくし難しい。
別にその子に非があるわけではなく、本当に空気と言うか、それまで築いてきた雰囲気の問題だ。

だからメールを返すことなく、携帯を鞄に入れた。
あと何人から聞かれるのかと思うと、憂鬱になる。
そんなことを考えながら歩いていたら、ヒールが折れた。
乗り換えの為に上っていた駅の階段で、右足に履いていたお気に入りのパンプスのヒールが折れた。
その衝撃で、階段の途中で盛大に転んだ。
脛をぶつけて、膝と足首を擦りむいた。

こんなにもツイていない日が来てもいいものかと思うくらいに、ツイていない自分がどんどん虚しくなっていく。
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