花に美少年

このまま一人ビジネスホテルに向かうことが、一気に寂しいことに思えてきた。
あの男は今頃あのアパートで幸せに過ごしているのに、私は友達からの連絡に怯えて一人ホテルで過ごさないといけない。

こんな理不尽なことってある?
私がいったい何したって言うの?

もう本当に、最悪。

破れたストッキングを見つめながら、ホームの隅で涙が零れた。
甘えていると思われるかもしれない。
非常識なのはわかっている。
社会人としても女としてもどうかと思う。
でも、今日くらい許して欲しいと思った。
許されても良いと思った。
だからホテルとは反対に向かう電車に飛び乗った。


"おねーさん"

"行くとこないなら、うちに来ませんか?"


たぶん私も、厄介な人間の一人だ。






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