花に美少年
残せばいいのにと言うと、それは申し訳ないと眉を下げて答えた。食事を残すことに抵抗があるらしい。
「好きだけど、歯磨きしたばかりだから今はいらない」
食べてあげても良かったけれど、また歯磨きをするのも面倒でそう答えると、「そうだよね。うん。わかった」と納得したように頷いた後、とっても嫌そうな顔をしながら人参を食べた。
その顔が子供みたいだから思わず吹き出して笑ってしまった私に、湊結児は少し拗ねたような顔をしながら残りのハンバーグを食べていた。
お弁当を食べ終えた湊結児は、明日は学校だから今日は早く寝ると言い、シャワーを浴びにお風呂に行った。
だから私もロフトに上がって、寝る支度をした。
朝畳んだ布団をもう一度敷いて、その上に寝転ぶと、やっぱり天井が近くて不思議な気持ちになった。
自分の家でもない場所で、当たり前のように寝ようとする自分が不思議だった。
それから、こんなわけのわからない図々しい女を受け入れる男のことも不思議に思った。
こうなった事情を話さないといけないと思ったのは、これだけの迷惑を掛けていることへの礼儀としてなのか、ただ話を聞いてほしいと思ったからなのかはわからないけれど、たぶんその両方が正解だろう。
お風呂から戻って来た湊結児がベッドに入り、部屋の電気を消したタイミングで、自分から話しかけた。