花に美少年
4day
目覚めて数分後に見た光景に、私は自分がまだ夢の途中に居るのだと思った。
それくらいに、ありえない光景。
「・・・あ、めいちゃん」
いつもよりも慎重にロフトから降りると、身支度をしている様子の男が、私に気づいて振り返り「おはよう」と言葉を続ける。
それから何も言えない私に近づきながら、綺麗にアイロンの掛けられたシャツのボタンを止めた。
落ち着いて考えれば、朝らしい普通の光景。
テーブルに置かれたコーヒーも、一緒に並ぶトーストも、焦げ臭くない部屋も、全てが朝らしい光景なのに、明らかにおかしい男のいでたちに、私は固まって動けない。
「めいちゃん?」
そんな私を、湊結児が不思議そうに見た。
だけどその表情を、そっくりそのまま返したいくらいだ。
「な、なに、それ?」
「ん?」
「え?何してるの?」
「何って?」
「ゆ、結児君、なんでそんな恰好してるの?」
私の問い掛けに、湊結児は顔を顰めた。まるで私が変なことを言っているみたいなその態度に、私は負けないくらいに顰めた顔で彼を見た。頭のてっぺんから足の先まで見た。