花に美少年

失礼なことを突然言い出した湊結児が、その手を私に向かって伸ばす。綺麗な指先が、髪に触れた。

「別に一生ここに泊まってとは言わないからさ、困っている間だけは俺のとこに帰っておいでよ」

「な、何言ってるの!?」

慣れた手つきで髪を撫でた男が、さっきまでとは違う顔をする。それは昨日、ロフトの上で見た顔。

「もし帰って来なかったら、俺制服のままめいちゃんの職場まで迎えに行くから」

「は!?って、私の職場なんて知らないくせに!」

「そんなのいくらでも調べられる」

「そ、それって、」

お、脅し?
私、男子高校生に脅されてるの?

「めいちゃんがちゃんと帰ってきてくれたら、困らせるようなことはしないからさ」

髪に触れていた男の手が、突然顎先を掴んだ。驚いて拒もうとした時には上を向かされていて、視線が重なる。

「めいちゃん、ハンバーグ作れる?」

「ハンバーグ?」

いったい急になんなの?
私を見下ろす男の目が、ユルリと細められた。

「俺、今日の夕飯手作りハンバーグが食べたいな」

「それって私に関係ある?」
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