花に美少年
いったいどうしてこんなことになったのか。
どれだけ冷静に考えても、ありえないしおかしい!
「めいちゃん」
「ひあっ!」
突然耳に触れた息に、身体が飛び跳ねそうになった。
「コーヒー、淹れてくるね」
いつの間にか私との距離を詰めていたらしい結児君の唇が、また耳朶に少し触れる距離で囁いた。
「・・・っ」
絶対にワザとだってわかっているのに、言い返すことが出来ない。身体は硬直して、心臓は嫌な音ばかり鳴らす。
どうしよう。身体中がおかしくなっていく。
背筋がゾワゾワ音を立てる。
血液がドロドロと音を立てる。
心臓がドクンドクンと音を立てる。
お腹の奥が、掴まれたようにキュンと音を立てる。
きっと狙っていたかのように始まった、ラブシーンのせいだ。
結児君が離れて行ったソファの上で、見つからないように深呼吸をした。
「はい」
「・・・あ、りがとう」
コーヒーの入ったカップを私に渡した結児君が、ソファを跨いで私の横に座る。だから少し距離を取るように右に動くと、クスクスと笑われた。