花に美少年
5day
「めいちゃん、お仕事行かないの?」
朝、制服に着替えた結児君が、鞄を片手に私を見る。
「今日は午後からなの」
コーヒーを飲み終えたマグカップを二つ洗いながら、結児君に視線を向ける。
「そうなの?だと帰りは遅い?」
「・・・遅い」
まるで同棲でもしているかのような物言いで聞いてくる男子高校生に、迷いながら答える。
「そっか。じゃあ今日は俺の夕飯はいいから」
「・・・は?」
「俺も夜バイトだから、まかない食べてくる」
「・・・はあ」
「でも11時前には帰るから」
そう言って、結児君はゆるりと目尻を細めた。
なんだろう。なんなのだろう。
柔らかな口調と甘い表情に騙されそうになるけれど、この男、凄く強引。
有無を言わせないと言うよりは、うっかり「わかった」と頷きそうになる巧みさに思わず身構えてしまう。
油断するとまた流されそう。
今日こそは、この部屋を出ると決めたのだから。
「わかった。学校頑張ってね」