私は君と嘘をつく



お昼休み、あたしはだいたい一人で食べることが多い

教室をでて渡り廊下を渡る。
ひとつ階段をのぼって
屋上の手前にある踊り場で、1人黙々とスマホを見ながらご飯を食べるのが、日課になっていた。


ここは静かで、人もあんまり通らないからゆっくり過ごすには最適。

ただ、たまに告白現場とかに遭遇してしまうのは、仕方ないと思っている。



今日も、一人でお弁当を開けて、食べる。



…つもりだったのに



「こんなとこで1人って、寂しいやつだな」


「…気を使ってついてきてくれたの??わあ、すごいありがた迷惑な話だね」


「んなわけあるか。お前が誰かに話してねぇか見に来たんだよ」


は??いやいやいや…

「朝言ったじゃん。言わないってば」


「わかんねぇだろ」


「うわっそんな信用ないなんて、ショックー」

「思ってないだろ」


思ってもないことを口にするのが得意です

んああもうめんどくさいなあほんと


万が一こんなところを女子に見られたら明日からあたしの席に花瓶が置かれてしまう
一昔前のいじめを行われてしまう


「はいはい、てか、いいの?こんなところ花岡先生に見られたら変な誤解されちゃうかもよ??」


「…しねぇよあの人は。」


そう言って、そっぽを向く桐谷。
視線が合わない。

彼女と長い付き合いだというような口ぶりで、よく知っているって遠回しに言ってるよね



「へえ、そ。でも、桐谷といるとすごーく女の子たちの視線が痛くてね、あんまり話しかけてこないでもらえるとありがたいかなあって」


「あっそ。じゃあ、ここでお前が言わないって約束するなら、もう話しかけねぇよ」


「約束って…」



案外子供っぽいことを言うじゃないの

少しだけ、可愛いと思ってしまった

少しの間黙っていると
ずいっと小指を出された。

「え?」


「約束、するよな?」


「え、あ、うん」


慌てて小指を出して、子供の頃によくやった《ゆびきり》をした。


「…じゃ、行くわ」


「うん」





懐かしかった

ゆびきりなんて、何年ぶりだろ










< 4 / 6 >

この作品をシェア

pagetop