煙草の味
彼と身体を重ねるまで、わたしたちは何度もデートを重ねた。すでに社会人だった彼は、色んなものをプレゼントしてくれた。服や靴、指輪まで。外堀を埋められていっているようで、少し怖くはあったけれども、彼は優しくて、加奈子が優良物件と言っていたことは確かだったな、と感心もした。
その優良物件くんは、生がつくほどに真面目な人で、デートを重ねて、それでわたしがそろそろかな、と思ったくらいに接吻(キス)をして、またそろそろかな、と思うくらいの時間が経ってからホテルに誘ってきた。その期間は、前に私が雑誌で見たことがある期間にピッタリで、少しだけ笑えた。
可愛いところもあるんだ。
なんて、まともな彼女の気分に浸ったり。
流されただけのくせに。
優良物件くんと言ってるくせに。
わたしはこのままずるずると流されて、彼と結婚でもしてしまうのだろうか。彼に抱かれながら、それでもいいかな、とわたしは思っていた。いざとなった彼の押しは強い。本当は押しが強いとは言えないかもしれないけれど、意見を言えるというだけで、じゅうぶん押しの強い男性だった。
きっと彼にプロポーズされれば、わたしは断らないだろう。
――わたしは断れないだろう。
わたしから彼に要求することはない。きっと、誰から見てもうらやまれるような男性だ。わたしは自分にそう言い聞かせる。
願うなら、結婚したら豹変するタイプじゃないことと、
煙草を止めてもらうことくらい――。
その優良物件くんは、生がつくほどに真面目な人で、デートを重ねて、それでわたしがそろそろかな、と思ったくらいに接吻(キス)をして、またそろそろかな、と思うくらいの時間が経ってからホテルに誘ってきた。その期間は、前に私が雑誌で見たことがある期間にピッタリで、少しだけ笑えた。
可愛いところもあるんだ。
なんて、まともな彼女の気分に浸ったり。
流されただけのくせに。
優良物件くんと言ってるくせに。
わたしはこのままずるずると流されて、彼と結婚でもしてしまうのだろうか。彼に抱かれながら、それでもいいかな、とわたしは思っていた。いざとなった彼の押しは強い。本当は押しが強いとは言えないかもしれないけれど、意見を言えるというだけで、じゅうぶん押しの強い男性だった。
きっと彼にプロポーズされれば、わたしは断らないだろう。
――わたしは断れないだろう。
わたしから彼に要求することはない。きっと、誰から見てもうらやまれるような男性だ。わたしは自分にそう言い聞かせる。
願うなら、結婚したら豹変するタイプじゃないことと、
煙草を止めてもらうことくらい――。