消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。
いつもは柔らかな雰囲気が、今日は色気立ってて女性らしさが際立っていて、おまけにいい匂いがする。
浴衣の袂がよく見えるその距離は、男としてその先を想像させて……
「ぅ……っ」
や、やばい、これは。
小さく呻いた僕は即座に目線をそらす。
知られたら彼女に嫌われるかもしれない、そんな下衆な感情が脳内を占めて、慌てて頭から締め出した。
さっきからすれ違う男が畑中さんを目で追うことは気付いていたし、それだけの魅力が彼女にあるのはよく知っている。
気にしないようにしながらも、「見るな」と言いたいのをぐっと堪えていた。
今までの僕からは考えられないような大胆な行動は、頭で考えるより先に顔を出しかける。
その度に僕は自分の理性を保つことに努めるのだ。
「い、行こうかっ」
よこしまな思いを紛らわすように、彼女の手を引いて金魚すくいの屋台へとずんずん進む。
その後ろを、哲と聖司が見守っていることには気付かなかった。