消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。
行き先は分かっている。
あとは進むだけだと思っていたが、人の波にのまれてなかなか前に進めない。
……こんなに距離があったのか。
これは苦難しそうだと思っていると……
どん、と人にぶつかった。
気を付けていたつもりだったが、相手は盛大に尻餅をついてしまった。
「申し訳ない。お怪我はしていないですか」
さっと手を差し出して、相手の手を掴んで引っ張りあげる。
目が合った。
「いえ、大丈夫です。こちらこそすみません。
知人とはぐれてしまって、ちゃんと前を見ていなかったもので…」
困ったように微笑む彼女は、こちらに気付いていない。
いや、これはまるで初めて会った相手に対する態度だ。
「……」
「あの、何か?」
「……俺が分からないか?」
驚きはあったものの、あくまで冷静に問うと、不思議そうな顔をしていた彼女は俺をじっくり見て息を飲んだ。