消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。



行き先は分かっている。


あとは進むだけだと思っていたが、人の波にのまれてなかなか前に進めない。



……こんなに距離があったのか。


これは苦難しそうだと思っていると……



どん、と人にぶつかった。


気を付けていたつもりだったが、相手は盛大に尻餅をついてしまった。



「申し訳ない。お怪我はしていないですか」


さっと手を差し出して、相手の手を掴んで引っ張りあげる。


目が合った。


「いえ、大丈夫です。こちらこそすみません。
知人とはぐれてしまって、ちゃんと前を見ていなかったもので…」


困ったように微笑む彼女は、こちらに気付いていない。


いや、これはまるで初めて会った相手に対する態度だ。



「……」


「あの、何か?」


「……俺が分からないか?」


驚きはあったものの、あくまで冷静に問うと、不思議そうな顔をしていた彼女は俺をじっくり見て息を飲んだ。


< 112 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop