消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。



一瞬、人違いかと思ったけどそれは違う。


そもそも僕が彼女を見間違えるはずもなくて。



でも、まさかそんな。


だって、まだ約束まで1時間もあるのに。



もしかして……


いつもこんなに早い時間から待っていたのか?



遅れたわけじゃないのに申し訳なくなる。


だけど、何時に約束したところで彼女はきっといつも僕を待つことになるんだろう。


分かっていながらも、今すぐ駆け出して謝りに行きたい気持ちになった。




放心するように、しばらく畑中さんを眺めていた。


ゆっくり呼吸を落ち着けて、あくまで冷静に話しかけられるよう努める。


それでも、一歩足を前に踏み出すと歩幅は自然と大きくなっていて。



逸る気持ちがまた募っていくのを感じながら、彼女に声をかけた。



「……畑中さん」


声が少し低くなってしまう。


< 120 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop