消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。



僕に見せないようにしているから、これが何かは聞いたことがない。


だけど……



見開きのまま落ちていたそれが砂で汚れていないかが心配で、何の気なしに開いていたページを見てしまった。




「………え、これって……」


中身を見て、言葉を失う。


呆然と突っ立つ僕に、畑中さんが声をかけてきた。



「直人くん、拾ってくれてありがと…——」


ぷつり、その言葉が途切れる。


きっと今、僕が手に持っている“それ”を凝視して立ち尽くしているんだろう。


そして、彼女は……



「——…だ」


小さく、掠れた声で囁いた。


僕の耳には届かない。



「っやだ、やだやだ見ないで!見ないで、見ないで!!」



取り乱したように叫んで、僕にぶつかってきた。


スケッチブックが奪われる。


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