消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。



なんて声をかければいいかも分からない。


多分、聞き出せない一番の理由はそれなんだろう。



それに気付いた時、彼女をダシに自分を正当化していたことにもすぐに気付いて、また落ち込んだ。


自己防衛ばかりだな。


結局いつも、大事な局面で後ろ向きになる。


この性格はやっぱり治りそうもない。



心底、自分が嫌になる。


そうして自己嫌悪に陥っていた時。



「直人くん。あの、これ…」


隣に座る畑中さんが鞄を探って、あるものを見せてくる。


「え、これ…」


「中、見て」


「……いいの…?」


「うん、いいから。直人くんに見て欲しいの」



それは、彼女がおそらく誰にも見られたくないもの。


あのスケッチブックだった。



僕の問いかけに深く頷いて、中を見るように促す彼女の顔は、さっきまでとはまるで異なっていた。


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