消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。
思わず顔を上げて畑中さんを見ると、切なそうな、寂しそうな、何とも言えない顔で微笑んでいた。
「全部、思い出しながら描いてるの。忘れないように何度も思い出して、描いて、描いて、描いて……。
だけど……」
自分の手のひらを見つめて話す彼女。
やがて、顔を曇らせて俯いた。
「描けないの。思い出せないの。
いつもいつも、会ったその日に家に帰ってから描こうとしても、手が止まっちゃって。どうしても思い出せないの…」
「え、ちょっと待って。この絵って…」
一体、誰を描いているんだろう。
思い出せない?
描こうとしても書けない?
どういう意味か、よく分からない。
「分からないよね、やっぱり」
「……何が…?」
「それね、全部直人くんを描いてるの」
「………え…?」
僕を…描いてる…?