消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。
「直人くんに出会うまでは、人の顔が分からなくてもいいと思ってた。どうせみんなから嫌われてるなら、それでもいいって。わざわざ手間をかけて覚える必要もない、自分を嫌ってる人のことなんて必死に覚えたくもないって」
少しずつ、分かってきた。
「だから、直人くんが初めてなの。こんなに人のことを知りたいって思ったのは初めてなの。直人くんのことだけは覚えていたいって思ったから。
だから何度も何度も思い出して、描いて、それを繰り返したけど……覚えられないの」
僕が彼女に抱いていた違和感の正体。
それは、普通の人にはとても理解できないような彼女の苦しみ。
誰にも届かなかった彼女の悲鳴。
「ごめんね、直人くん。
私は……貴方が分からない」
知り合ったばかりの頃、駅でスルーされたことがあった。
あれは、僕の顔を覚えていなかったから。