消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。
手すりに手を伸ばして、なんとか体を支えると、ほっと息をついた。
これは夢じゃないか…?
再び目を向けると、数秒前と何ら変わった様子もなく腰掛ける彼女の姿が窺えた。
端の席で、すぐ横の壁に頭を預けて眠っている。
揺れる車内で、そろりと意味なく足音を忍ばせて歩く僕は、はたから見ればかなり滑稽なことだろう。
それくらい挙動不審になっているのだ。
そっと、彼女の真向かいの席に腰を落ち着けるも、視線はあちらこちらと忙しない。
ええと……
ど、どうしたらいいんだろう。
予想だにしていなかった展開に、未だ動揺を隠せずにいた。
と、とりあえず一旦落ち着こう。
「すぅ、はぁー……すぅ……」
吸って、吐いて、ゆっくりと深呼吸をして、努めて冷静をと心がける。