消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。
吸って、冷静に、冷静に、吸って、吸って……
「っう、げほ……ごほっ、ごほっ…!」
途中で息を吐くことを忘れて、盛大にむせてしまった。
彼女を起こさないよう、なるべく声は抑えたつもりだけど、その分咳の治まりが悪い。
ようやく咳が止んで、大きく息をつきながら目を閉じる。
ああ、かっこ悪いな。
哲たちが知ったら、向こう一ヶ月はからかわれること間違いなしだ。
面目なんて既にあって無いようなものだけども、恥を晒すのは回数を重ねても嫌なものだ。
《まもなく、〇〇、〇〇》
緊張状態が続いたまま、数駅が過ぎた頃。
ガタン、ガタンと律動する電車に揺られていると、車内放送が流れた。
毎朝、彼女が乗ってくる駅だ。
すなわち、毎日降りる駅でもある。
ちらり、目を向けると瞼は固く閉じられたまま、まだ眠っている。