消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。
怪訝そうな顔をする彼女に、ハンカチを差し出す。
「あの、これっ……落としましたよ」
努めて冷静に、自然な感じで言った。
「え、あ……!」
慌てたようにそれを受け取った彼女は、制服のポケットにしまい込む。
そして、少し気まずそうに頭を下げた。
「あ、ありがとう、ございます……」
高くてよく通る、涼やかな声。
落ち着いていて聞き取りやすい声音が、耳に心地いい。
もっと聞いていたいと思ったけど、ここで話題を切り出すのもおかしな話だ。
ともあれ、これは初会話……!
半ば感動しながら、もう一歩を踏み出す勇気が出なくて。
「それじゃあ……」
やっぱり無理だ…!!
直接対話はまだ難易度が高すぎる!
さっ、と背を向けて、ホームに戻ろうと階段を下りかけた時。
「あの……!」