消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。



呼び止められて、びくり、と体が不自然に揺れる。



予想外のことに、応対する思考回路も絶たれて。


ぎぎぎ、と首を回して、引きつった笑みを向ける。


そして。



「ナっ、ナンっ…デ、ショウカ」



直後、思った。


あ、やってしまった……と。



上ずってどもった上に、一字一字の不揃いなイントネーション。


これなら、日本語をおうむ返しに話す外人の方がよっぽど円滑に喋れるだろう。



目を点にして立ち尽くす姿に、居た堪れない気持ちが湧き上がる。


ショックからか、体が動かない。


走り去ることも出来ず、冷や汗をかきながら俯いた。



落ちる沈黙。


やがて……



「……ふ…っ」


微かな声。


これは……笑ってる…?



ばっ、と顔を上げると、そこには確かに笑いを噛み殺す彼女の姿があった。


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