消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。
話したことはないし、名前も知らない。
分かっているのは、着ている制服がこの辺りでは少しばかり有名な名門私立高校のものだってことくらい。
知らない事が多すぎる。
これだけ注目しているのに、情けなくも見ているだけ。
朝は急いでいるかもしれないし、時間を取らせたら大変だ。
……なんて、言い訳をするのは何度目だろう。
そうこうしているうちに1ヶ月。
早いか、遅いかで言ったら多分、前者だ。
声をかけられずにいる間、僕は一体何をしていたのかと思い出そうとしても適わない。
学力はそれほど悪くはないと思うけども。
いやいや、そういう問題じゃないか。
ふと、彼女が顔を上げた。
気付かれない程度に、と心がけていたつもりだったけど、どうも上手くはなかったらしい。
ばちり、と抵抗もなく目が合う。