消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。



「畑中さん、こっちだよ」


思い切って声をかけると、彼女はばっと勢いよく振り向いた。


心底驚いた顔をして、上から下まで、まじまじと見てくる。



……じっと見てくるの、癖なのかな。


ふと、そう思う。



「わ、直人くん!びっくりしたあ。声かけてくれたら良かったのに。
てっきり外にいるかと思ったよ」


表情を和らげて、脱力したようにそう言うもんだから、僕の方がびっくりする。



嘘をついているようには見えない。


ということは、本当に気付かなかったということだ。


疑ってかかった自分が、途端に恥ずかしくなった。



実際に話していると分かる。


昨日もそうだったけど、畑中さんは正直だ。


一言一言に、表情を二転三転させるから、本音で話してくれているという安心感がある。


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