消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。



ほ、他に何を言えば良いんだろう。


ぐるぐる、まとまらない思考が邪魔をして、上手く考えられないでいると。



「うん、なんとなく分かってたよ。ここに来た時から……もっと言えば、昨日の時点で気付いてた気がする」


畑中さんは、悲痛な顔をして小さく頭を下げる。


「ごめんね、気付かないふりなんて。あわよくばって思ったけど、そんなわけには行かないよね。
直人くんの気持ち踏みにじって、本当にごめんね……ごめんね、ごめんね…っ」



畑中さんは、涙ぐみながら何度も謝った。


そんな顔をさせたいわけじゃなかった。


けど、僕が言ったことは確実に、彼女の表情を一変させるものだったから、容易に言葉をかけることができなくて。



謝るのは僕のほうだ。


一度終わっていたはずのことをまた蒸し返して、彼女の疑惑を無理やり確信へと変えさせた。


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