消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。



一体、何を気をつけるんだろう。


あ、なんか……泣きたい。



今度こそはっきりと顔に出す僕に、畑中さんは“しまった”という表情を見せた。


「ご、ごめんなさーい!」



本当に悪気がなかったんだと分かる彼女を必死に宥めたけど。


「飲み物買ってきます!」


気が済まないと言って近くの自販機まで走っていくその健気な後ろ姿を、見送ることしかできなかった。



……戻ってきたらお金返そう。


これだけは強い決意を持って頷けたのだった。




近くの石段に座って待っている間、徐々に体が熱を持ってくるのが分かった。


暑いな……。


スマホで気温を確認すると、29度。


まだ上がりそうだな、と思って着ていた半袖の薄手の上着を脱いで、肩に提げていたリュックにしまう。


わずかに吹くぬるい風が気持ちいい。



ひとしきり涼んで、顔を上げる。


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