消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。
——『だれですか?』
彼女から放たれた言葉が思い出される。
案外、ショックは大きかったらしい。
胸の内を渦巻き出した、言いようのない黒い感情。
気を抜いたら溢れてしまいそうだ。
ぐっと堪えて、なんとか言葉を絞り出す。
「飲み物は、もう…いいから」
「直人く…——」
「行こう」
「っ…」
目を逸らして俯きがちに言う間にも、顔を歪めて唇を噛み締める畑中さんが視界の端に映った。
何も言えなくなった彼女の手を、半ば強引に引いて足を踏み出しかけた時。
「なに、彼氏?」
信じられないといった調子で言う女子に、行く先に割り込まれて足を止めさせられる。
「あんた、騙されてんじゃないの?」
「……」
「大方顔につられて誑(タラ)し込まれたんでしょ。そいつ、性根腐ってるから気をつけたほうがいいよ」