消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。



分かった上で、そんな最大の短所を“優しい”と称してくれる。


本当にそうかも分からないのに、疑わずにはっきり言ってくれる。


僕がそういう人間だと、理解を示した上で認めてくれる。



「人ってほら、唯一理性で考えられる生き物だって言ったりするでしょ?
少なくとも考える能力があるし、悪意とか妬みとか、そういう黒い部分を一切持ってない人なんていないよ」


「……君も?」


「ふふ。私なんて、全然いい人じゃないよ。
相手のためにつく嘘とか、自分のためにつく嘘とか、嘘にも種類があるでしょ?
私は自分のために、数えきれないくらい悪い嘘ついてる」



ざわり、胸の内で何かがこみ上げる。


「……君が言うその悪い嘘、僕にも……ついてる…?」



震える声で問いかけた僕は、行きすぎた。


踏み込んでいいことじゃなかったはずなのに。


だけど、どこかで信じたかった。


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