消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。



“悪い嘘”と、彼女は言うけど。


一概に悪いと決めつけられるものじゃない。


そうしないといけない状況に陥っているなら、やむ無しと言えないだろうか。



たとえもっと別の意図があって、平気で嘘をつけるなら、彼女の思考はもっと歪んでいるだろう。


間違っても涙なんか流せない。




僕を見てくれている。


それを知る前に、嘘による事実を提示されていたら、きっと彼女を信じられなくなっただろう。


その点に関して、何よりもほっとしている自分に気付いた時。




「どうしよう」


「……?」


「君が、好きだ」



どうしようもなく、『愛しい』と思った。



それは、胸の内を暖かく照らして、はっきりと形を成す。


彼女を知りたい。


もっと、色々なこと。


嫌なことも良いことも。


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