【完】ホタル
私は知っている。
ユキは本当は名前を持っていることを。
理由とか根拠とかはない。
でもわかるんだ。
私とユキの間に隠しごとなんてできない。
「じゃあ誕生日プレゼントそれでいいから。」
「しつこいぞ、夏菜。」
「ユキが教えてくれないからじゃん。」
「いつまで経っても子供だな。」
「子供じゃないもん。
私、16歳だよ?もう結婚だってできるようになるんだから。」
「結婚?……ああ。
あの人間同士が交わす契の事か。
くだらないな。」
「くだらなくないよ。ふたりがこれから一生を共にする証なんだから。
好き合ってるって形に残すためのものなんだよ。」
「興味あるのか?」
「そりゃ、あるよ。」
「ふん、夏菜にはまだ早い。」
「うるさいなあ。」
いつもユキは私を子ども扱いする。
ユキに子ども扱いされるのは、嫌いだ。
もう、出会った頃の私じゃないもん。
あの頃は8歳だったけど、今はもう16だし。