【完】ホタル
「私、夏菜は。ハクを夫とし。
健やかなる時も。病める時も。
喜びの時も。悲しみの時も。
ハクを愛しつづけることを誓います。」
嬉しくて涙が止まらない。
ハクが、名前を教えてくれて。
こんな風に愛の形を伝えてくれて。
こんなにも素敵な誕生日。
生まれて初めてだよ。
「次は指輪か。
大層なものじゃないのは許せ。」
そういって台の上に置かれた小さな箱をあけて。
黄色い光を放つ指輪を取りだした。
この光、蛍?
草花を丸めて作られた簡素なものだけれど。
花の部分が黄色く光っていて。
この光はここまでの道を照らしていたものと同じ。
蛍の光だった。
片方の手で私の左手をそっと持ち。
指輪をもう片方の手で運ぶ。
その時、ハクはぽとりと指輪を落としてしまった。
「もう、ハクったら。
そんな緊張しなくってもいいのに。」
拾おうとしないハクに変わって私は。
落ちた指輪を拾った。
……その時、気付いた。
「どうして……。」