【完】ホタル
拭っても拭っても止まらなくて。
顔がぐしゃぐしゃになっても止まらない。
初めて言ってくれた好きの言葉も。
嬉しさより、切なさの方が勝っていた。
「誰より好きだ。」
「わ……たしだって、ずっと好きだった。
ハクのこと好きだった……!」
「もう泣くな、笑った顔を見せてくれ。」
そう言ってハクは私の目からこぼれ落ちる涙を拭った。
ああ、本当に。
本当に、お別れなんだね。
もうハクの身体は半分以上光に変わっていて。
本当に、あとわずかなんだと。
そう、知らしめていた。
「やっと、お前に好きと言える。
胸を張って好きだと言える。」
涙は止まらない。
次から次へと頬を伝ってこぼれていく。
「人は結婚というもので契りを結び。
ふたりの好きだという想いを形に残すのだろう?
これが夏菜を縛り付けることになるのかもしれない。
……それでも、俺に出来ることはこれが精いっぱいだ。」
声にならない声がこぼれる。
笑え。笑え、笑え私。