【完】ホタル
「夏菜が好きだ。だれにも渡したくない。
出来ることならお前を看取るまでずっと一緒にいたかった。」
「一緒に、いてよ……。」
「ちゃんと友達を作れ。
母親とも仲良くするんだ。
トキが心配するからな。」
「分かったから、
約束するから……だから。」
「将来、共に人生を歩むものが出来たなら。
またここへきてくれ。」
「……っ、ハク!」
「いやだな、そんなの。
夏菜は俺だけ好きでいたらいい。
……ごめんな、嘘はつけない。」
「ずっと、ずっとハクが好き。
大好きだよ!」
「ありがとうな、夏菜。
お前がいてくれて、俺は楽しかった。」
そう笑うハクの顔は、今までで一番美しくて。
ああ、覚悟を決めているんだ。
潤んだ瞳が、私と同じ気持ちだと言う事を裏付けていた。
ごめんね、ハク。
私が名前を知りたいなんてせがんだから。
ごめんね。
……ありがとう。ありがとう。
「まだ結婚式は終わっていないぞ。
誓いのキスが残っているんだから。」
私たちは向かい合って。