【完】ホタル
だって、泣いていたんだもん。
声、かけられない。
ごめんね、お母さん。
ずっと言えなくて。
ハクと、約束したから。
ハクの残してくれたものを、私は大事にしていく。
出会いは、小学2年生の夏。
不思議な、奇跡の出会い。
運命に手繰り寄せられた、出会い。
白くて綺麗で。少し冷たくて。
でも、優しい。
人より冷えた身体。
そのぶん心は温かい。
私達とそう変わらない、狐の妖怪。
撫でる手は優しくて。
ぶっきらぼうな気遣いがくすぐったくて。
私を一番に想ってくれている。
ハクの瞳が好き。
ハクの声が好き。
ハクの手のつなぎ方が好き。
ハクの意地っ張りな所が好き。
ハクの全てが好き。
好きの言葉も。愛してるの言葉も。
残していってくれたすべてを私は忘れない。
ずっとずっと、忘れない。