【完】一ヶ月の恋人
「来ないと思ってた。」
風見さんはそう呟いた。
「すごく悩みました。でも。
やらずに後悔するくらいならやって後悔しようと思って。」
「優しいね、詩羽さんは。」
「そんなことないですよ。」
「僕にとっては、優しいです。」
柔らかく笑うその顔に。
胸の奥が締め付けられるのを感じた。
「詩羽さん。」
「はい。」
「僕と、付き合って下さい。」
「……お願いします。」
こうして私たちは付き合うことになった。
1ヵ月という期限付きの恋人。
好きだの愛だの、そういったものがない。
おためしの、恋人。
彼にとって最初で最後の恋人。
そして、私にとっても彼は。
最初で最後の恋人だった。