【完】一ヶ月の恋人
「っていっても付き合ってないし振られてるし片想いなんだけどね。」
「えっ、振られてるのにあんなにアピールしてるの?」
「え、ダメなの?」
「いや、普通気遣って距離置いたりとか。」
「好きなのに?そんなのおかしいじゃん。」
私の言ってることは間違ってないはずなのに。
私の目を真っ直ぐ見てそう言い放つ灯さんを見ると。
私が間違っているんだって気になってしまう。
「だって先輩はそういうタイプじゃないでしょ?
誰かの好意を蔑ろにするタイプじゃないし。
それに、何か隠してるし。
それを知るまでは。っていうか振られた理由に納得するまでは。
絶対にあきらめない!
先輩が結婚するまではあきらめない。」
「け、結婚!?」
「誰かと付き合っても奪う。略奪上等。
それくらい、好き。先輩が大好き!」
そう自信たっぷりの笑顔で言い放つ灯さんは。
キラキラ輝いていた。
……好き、なんだ。先輩の事。
「詩羽ちゃんにはそういう人いる?」
自分の好きが、小さく見えてくる。
先輩への想いの違いも、覚悟の差も。
私は、先輩の事知ろうとしなかった。
断られた理由を探ろうとも。
振り向いてもらえるまで頑張ろうともしなかった。