【完】一ヶ月の恋人
そう笑って言ってくれた。
その笑顔に涙がこぼれて。
わたわたとしながらも、必死に指で涙を拭ってくれた。
あなたと出会うときはいつだって涙を流していて。
恋の渦中でぐるぐると目まぐるしく駆け回っている。
あなたの魅力に気付くのに1週間もいらなくて。
きっと、最初に出会ったあの時から。
あなたに惹かれていた。
「詩羽。」
「はい。」
「詩羽の事が好きです。
僕の、恋人になって下さい。」
「こちらこそ。」
私たちは2度目の告白をした。
1度目のように形式的なものじゃない。
気持ちのこもった、本当の好き。
何度も爽太に聞かれた。
僕は残して去っていってしまう方だから。
詩羽の事が好きだけれど。
重荷になってしまうことはできない。
僕がいなくなった後、寂しい思いはさせたくない。
だからよく考えてほしい。
考えたって答えは変わらない。
残り1ヵ月なくたっていい。
この気持ちに嘘はつきたくないから。
そうして私たちは恋人になった。
彼が亡くなるまでの、あと14日間。
誰より濃く繊細な恋。
君と僕の、3週間の恋物語。