【完】一ヶ月の恋人
綺麗な女の子が姿を現した。


予想外の来客に胸が大きく高鳴る。
久しぶりに同年代の女の子を前にして身体中が緊張する。


相手も予想外の人物だったのか。
まじまじとこっちを見つめてくる。


……そんなに見つめられると恥ずかしいだけど。


だからと言って冷たい態度を取るわけにもいかないし。
……それにしても。


かわいいな、この子。


ぱっちりとした二重の目に。長くて綺麗な黒い髪。
きっとこの近くであろう高校の制服を身に纏っていて。
少し、羨ましくなった。



「笹原詩羽です。」



詩羽。
名前すら可愛いと思った。
ぴったりだと、そう思った。


真っ赤になった目元はこすられた跡があって。
少し潤んでいた。
きっと何かあったんだろうと話を聞くと。
堰切ったように涙を流し始めた。


失恋をした、と彼女は言った。


失恋、というだけでこれだけ泣いて。
相手を思って泣いて秘めた想いをぶつけられる。


その心に興味がわいた。



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