【完】一ヶ月の恋人

予想はしていたけれど、やっぱり堪えるものがあって。
自分の軽率な行動を後悔した。
引きとめることも追いかけることも言い訳する事も出来ない。
ただ待つことしかできない自分が、酷く嫌になった。


そんな僕に追い打ちをかけるように。
病気は進行の速度を速めた。


彼女が来ない間にまた痩せた。
髪はどんどん抜けていく。
まともに食事を摂るのも困難になっていった。


死期が近付いていると、身体が感じ取っていた。


きっともう長くないだろう。
こんなことならこんな気持ち、知らなければ良かった。


誰かをこんなにも愛おしく想う気持ち。
手に入れたいと思う気持ち。
こんなもの知ってしまったら。


死ぬのが怖くなってしまう。



「好き。」



病室に走って入ってきて僕を抱きしめた彼女が。
小さな声でポツリと呟いた。


その後、泣きながら。



「爽太が好き。」



そうはっきりと言ってくれた。


きっと僕が病気になってしまったのも。
今日この日を迎えるための犠牲なんだろう。


< 29 / 42 >

この作品をシェア

pagetop