【完】一ヶ月の恋人
詩羽って名前で呼んでくれる事も。
しょうがないなあって、笑ってくれる事も。
かわいいなあ、って言って頭を撫でてくれる事も。
全部全部私だけの特権だった。


先輩の卒業式の日。
第2ボタンがほしいなあなんて呟いていた事を覚えていてくれて。
全部もぎ取られた制服姿で。
前言ってたからなんていって、死守したボタンを私にくれて。
高校待ってるって、言ってくれて。


そんなの、期待するに決まってる。
他の子より明らかに特別扱いしてくれた。
だから、もしかしたらなんて思っちゃう。
あわよくば、なんて思っちゃう。


思わせぶりな態度とらないでよって。
こんな風に振るならもっと冷たい態度とってよって。


そう思う。
それでも、先輩が好きで。
傷つけないようにしてくれたり。
優しくしてくれたり。


そんな先輩が好きで。
そんな先輩だからこそ、好きになったし告白できた。
振られた時だって、ちゃんと納得できた。


はずだったのに。
この人のせいで。
風見さんのせいで。
納得しようと思ってたものが。
築き上げた虚勢がボロボロにはがれて。
涙と一緒に流れていった。



< 7 / 42 >

この作品をシェア

pagetop