初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「もしかして待ちましたか?」
「ん、クルミ。おしいな」
「へ?」
「待った?ううん、全然ってヤツ?やってみたかっただけ」
そう言っていたずらっ子みたいに笑う先輩。
まるで中学生の時みたいな子供っぽい笑顔で。
「先輩って案外乙女なんですね?」
私はちょっと笑って先輩に言うけど、それに対して真面目な顔で答える先輩。
「乙女って言うか。あの頃のやり直しをしたいのかもな」
「あの頃には戻れませんし、あの頃の映画だってやってませんよ?」
私は敢えて茶化したように言う。
あの頃のやり直しなんて先輩にして欲しくない。
そう思った事で、私はある事に気づいてしまった。
やり直しなんて出来ないってこと。
あの頃の事は想い出でしかないってことも。
「ん、そうだな。悪い」
「ちょっと早いけど、中で待ってればいいですよね?」
そう言って先輩の手を取り歩き出す。
私から先輩の手を取るのは初めて。肩に触れるとかそういうのじゃなくて、手を繋ぐ。
これが今日の私の意思表示。
少し驚いたような顔をした後、先輩はその手をきちんと繋ぎなおす。そして、
「チケットは予約したから。パンフでも買って待ってるか」
いつもの先輩に戻ってニッコリと微笑んだ。