初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
慌てて手を引っ込めた私の手を先輩はつかんで、

「違うっ、」

「っ、―――」

強い力で掴まれて、今までの先輩とは違う雰囲気に戸惑う。

「クルミに触れたら、夢が覚めるんじゃないかなんて思って……」

「夢?」

「ん、そんなの今度こそ嫌だから」

辛そうな先輩の顔に、私がどうにかしてあげたくて。

どうしたらいい?先輩がどうしたら夢じゃないってわかってくれる?

「先輩、夢じゃないですから。手離してください」

不安のつまった瞳を見たままそう言うと、先輩は静かにその手を解放してくれた。
だから私は解放されたその手をゆっくり先輩の背中にまわして

「大丈夫です。私はここにいますから」

先輩は付き合うと決めてからもこんなにも不安にさせてた。
彼女になったなんて名ばかりで。先輩が安らげるそんな場所だと感じて欲しくて。そんな想いをこめてぎゅーっと抱きしめた。

先輩を抱きしめるだなんてやっぱり男らしい考えなのかもしれない。
けど、今の私ができるのはそんなことぐらいしかない。

「……クル、……ノリっ」

「はい」

私が返事をすると、先輩は私と同じぐらい、いやそれよりももっと強く抱きしめてくれた。
そう、ここが私の居場所で。
先輩の居場所でいられるように。
そう願いながら
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