初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「でも……」
困った顔のままこちらをうかがうノリちゃん。
さすがにここに呼ぶわけにもいかないし。12月の金曜日、四人なんてなかなか入れないかもしれない。
咄嗟に先輩が連れて行ってくれたあのバーを思い出す。確か奥に四人席もあるとか言ってたような。
「あ、あのアイリッシュバーなら空いてるかも?」
「アイリッシュバーって?」
そんなのこの辺りにあるの?とでも言いたげなノリちゃんを他所に、坂下くんの答えを待つ。
「あぁ、そうだね」
ふんわりと柔らかな印象で承諾してくれた坂下くん。
それだけ確認すると席を立った。
「じゃ、移動」
まだ駅に居る木村と合流できる場所まで誘導してもらって、四人揃ってアイリッシュバーまで向かう。
「ホントにここ?」
ノリちゃんは私と同じ感想を、階段の下で立ち止まって坂下くんに確認するように聞く。
私に聞かないあたりやっぱり信用されてない。
木村はそんなノリちゃんとは違い先に階段を上っていく。
「ほら、木村行っちゃったよ?」
そう言ってやれば当然追いかけるように階段を上るノリちゃん。
その背中を見ながら私もゆっくりと階段を上った。