初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
『ごめん、寝てた?』
聞こえてきた声に、心が少しずつ温かくなっていく。
まだ部屋の中は寒いというのに。
「いえ、今帰って来た所です」
着替えもせずにソファーにコートを投げ出しておいたまま。暖房だけつけて部屋が暖かくなるのを待ってた。
だけど、一瞬にして周りが暖かくなった気がした。
『あぁそうか、今日は小山田と会うって言ってたか』
「はい」
その事はメールで伝えてた。
だから当然今日もおやすみのメールが来るのかと……
『……』
そこまで話して、何故か沈黙。
先輩との会話の途中でこんなこと今までなくて少し焦る。
「あのっ、今、家ですか?」
こんな時間なんだから当たり前なのに、結局口から出た言葉がこれ。
いかにいつも先輩がうまく会話を繋げてくれていたかがわかる。
『や、今帰ってる所、なんだけど……』
少し様子がおかしいけど、週末だし先輩も飲んだのかもしれない。
私も飲んだ帰り道に彼氏に電話したりすること、良くある。
「気をつけて帰ってくださいね、あとで…―」
―――ピンポーン
家のチャイムと同時に耳から同じ音が聞こえた、気がする。