初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「言おうとしてたんだけど、着いちゃったから」
そんな風に可愛らしく言える先輩に軽く嫉妬。
やっぱり乙女力の高いのは先輩の方。それ私にも少し分けて欲しい。そう思いつつ小さくため息。
「で?お邪魔してもいいのかな?」
困ったように眉を下げてもう一度聞いてきた先輩。
あ、私。返事してなかった?
「あ、すみませんっ、どうぞ」
「なんでクルミが謝ってんの?」
「え、なんか……」
可愛く言えなくてごめんなさい。
気がきかなくて、乙女力がなくて、ほんとすみません。
「ふっ、ほんっとクルミは、」
「な、なんですか?!」
その時気付いた。
玄関で、向かい合った状態で片手を取られている。
いつもよりもちょっと目線が高めの先輩が表情を緩める。
……そして先輩の手に力がこもり、そのまま引き寄せられた。
「あ、」
トクントクン―――
鼓動が速い気がするのは私のモノなのか、それとも咄嗟に先輩の胸に置いた手から伝わっているからなのか。
「……勝手に来てごめん、」
腰にまわった手の力が一層強くなる。
あぁどうして先輩はこんなにも切ない声を出すんだろう。