初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
抱きしめられた耳元で先輩が焦ったように呟く。

「うわー、俺って堪え性がないな」

今のキスの事、言ってるんだろうけど。
そうですね。とも、そんなことないですとも言えない。

「ごめん、酔った勢いで来て」

「いいえ」

言うほど酔ってない気がするけど、なにか言い訳をつけたいからかも。
それに、まだ不完全な私の想いを先輩は待っていてくれたのがわかったから。
少しずつでも近付きたいと思う。その気持ちに嘘はない。

「ごめん、ほんとごめん」

「何回言うんですか?ソレ」

こんな風になるまで待たせていた私の方がソレを言わなきゃいけないぐらいなのに。

「だよな、で…―」
「だいたいっ、謝れるような事、何もないですから」

いつまでも謝り続けそうな先輩を止めたくて。ついでにその口も塞ぐ。

あぁやっぱり、私にはこんな男らしいやり方しか、できない。
先輩とのキスは今日が初めてなのに。

乙女な先輩はもっとロマンティックな方法を考えてたかもしれない。
わざと音をたててその唇から離れた。

「ほんっと、クルミって」

「はい。男らしくて惚れ直しました?」

やっぱり私は、乙女にはほど遠く……そして男らしい。
< 155 / 820 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop