初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

「あの後って、クルミたちはすぐ帰ったの?」

きた、想像通り。嘘をついてもバレるのはわかってるから、本当の事をかいつまんで言う。

「あの日さ、坂下くんちょっと元気ない感じがしてたんだよね?」

知ってた?ってノリちゃんに聞いてみるけど、全く気付いてないと言う。注意力があるノリちゃんも木村の前ではそれが散漫になるらしい。

「まぁそんなだから終電までの間、飲みに行ったの」

「へー、坂下も落ち込む事なんてあるんだ」

「そりゃ、あるでしょ?人だもん」

笑って返す私に全く疑うことなく「そうだよね」と言うノリちゃん。ちょっと心が痛むけど、本人がそれをどうするか決めてからじゃないと私が言う事じゃないから。

「あの頃は話しかけるのも精いっぱいって感じだったのに、人って成長するもんねー」

「ちょっと、あの頃って今より十数年も前じゃないっ、さすがに成長しなかったらヤバイってば」

でも、ノリちゃんの言うように坂下くんは当時私は大人しいのかと思ってたって言ってた。
けれど「でも先輩とは仲良かったよね?」そう続けたんだった。

ノリちゃんに隠し事がしたいわけじゃない。だけど、少しだけ。ノリちゃんの幸せな顔が曇らないように、今は本当の事を言わないでおくだけ。
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