初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
坂下くんが想っているのは奥さんのくるみさんなのに。
まっすぐ見られたその視線に想いなんてこれっぽっちもないのに。

「そう、だよね」

「小さな事から亀裂は大きくなっていくんだよ。だから、」

そうだ。坂下くんは自分に起こった辛い事のその二の舞にならないようにと進言してくれてる。

「でも、まだどこまでそういうの言っていいのかわかんなくて」

それは本音だった。
だってこういう事、相談するのは今までずっと女友達で。実際の男の人の考えなんてわからない。まぁ個人で考えも違うとは思うけど。

「先輩はそう言う事、聞いてくれない？」

「いや、そんな事ないんだけど、だから余計に言えないって言うか……」

言ってしまったら先輩は自分の事をおいても私のそれを叶えようとするから。だから言えない。

「……遠慮される方が、先輩嫌だと思うけど」

「え？そうなの？」

「まぁ普通好きな子の事はなんでもやってあげたいと思うんじゃないかな？」

「そうなの？」

同じ言葉しか口から出なくて。
坂下くんの口からもそんな言葉が出たとは思えなくて。

「まぁ俺なら、そうかな。でも、きっと先輩もそういうタイプだと思うよ」

「……そうなんだ」

やっぱり私は、坂下くんの事も先輩の事もまるでわかってないらしい。
< 170 / 820 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop