初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「今日はありがとう」
「そんな、こちらこそ。……なんか相談に乗ってもらったりして」
男友達って良いものかもしれない。なんて一瞬思ったけど。
これ以上坂下くんと二人で会ったらいけない。
さっきの胸の音はその警告音。
私には先輩という彼がいるんだから、なにもわざわざ男友達との時間を作る事もない。
「アドバイスになったかわからないけど」
「いえ、ほんと勉強になりました」
そう笑って言ってみる。でももう二人では会わない。
だってきっと色々と、無理だ。
私は先輩のあの笑顔を曇らせないって決めたから。
「それじゃ、おやすみなさい」
そう言って降りようとする私に、後ろから声が追いかけてくる。
「また、会えるかな?」
坂下くんが求めているのは私じゃない。それがさっきわかった。
クルミという名前の私と会う事はきっと坂下くんにとってもいい事ではない。
だから振りかえって坂下くんを見る。そして、
「また来年、みんなで新年会でもしようか?ノリちゃんに言っておくから」
そう言って返事も聞かずに電車を降りてきた。
坂下くんがどんな顔でそれを聞いたのかは分からない。
でもきっと、そうする事が私が今出来る事なんだと自分に言い聞かせた