初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
ねぇ先輩。
今日会いたいって言ったのは私で。
遅くてもいいからってワガママいったのも私なのに。

玄関に入り靴を脱いでいる先輩の背中を見ながら心の中で問いかける。

私ばっかりが先輩にあたえてもらうだけで。先輩に何か返したいそう思う事が先輩の口からごめんを生ませているのなら……

頭の中で一瞬うかんだそれを思いっきり打ち消した。

「さっき、チャイムがなったからてっきり先輩かと思ったらお隣さんでした」

「隣?」

怪訝な顔で隣と口にする先輩はどこか様子がおかしい。

「お隣さん、会ったことあるんですか?」

「あぁ、この前来た時に見かけた……」

先輩から目をそらされた。見かけただけなのになんで?

「そうなんですか?私、引っ越してから今日初めて会ったのに、先輩すごい確率ですね、それ」

「で?なんだったの?お隣さんの用事は」

そんな確率にちっとも嬉しそうにない先輩は、その先を促すように聞いてくる。
たしかに、本題がそれてた。なんともしっくりこない空気を変えたいがためにいった話題なのになぜか余計におかしな感じに。

「あー、えと。なんか明日朝早くから工事するのでご迷惑おかけしますって」

そう答えて先輩を見ると強張ってた表情がやっといつもの顔になる。
そして下を向いて一言呟く。

「……そうなんだ」
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